専門家バイアスにご注意!
「自分の身は自分で守る」
ここでは、健康面のことを特に意味していますが、わたし自身が変形性股関節症を発症してから文字通り身をもって学んだことです。
わたしは、高校生のときに先天性の臼蓋形成不全を起因とした変形性股関節症(変股症)と診断され、20歳の時に「臼蓋回転骨切り術」という自骨の手術を受けました。
当時の股関節の状態は前期症状で、股関節自体への痛みは全くといっていいほどありませんでしたし、普通の生活をする上で不都合なことは何一つありませんでした。
その時に絶対に手術をしなければならないわけではなかったのです。
そういう状況にもかかわらず、最終的に手術を受けることを決めたのは、「進行性による症状の悪化を予防するためにはいま手術するのがベスト」という医師の強いススメに対して、自分自身で何ら疑問を感じることなく受入れてしまったことによります。
「最初に手術ありき」
初めての受診の際、今この前期症状の状態で手術をすれば一生もつであろうから、早く手術をするに越したことはないと言われ、手術後も手術前の(それまでの生活と同じ)状態にほぼ戻るとも伝えられました。
大好きなスポーツ、運動も、競技としては無理でも、術後は趣味で楽しむ程度なら問題ないという説明を受け、自分としては手術さえすれば進行も防げるし、一生もつのだなと軽く考えてしまいました。
ところが、術後、脚長差が生じて(患足の右足が短くなったことにより)万年腰痛となり、それから約10年後に患部の痛みが出だし、股関節の曲がりも急速に悪化していきました・・・
・・・診察をしてみると、レントゲン上でみる限り、関節軟骨がほぼなくなっていました。
考えてみれば、手術当時、この手術にはまだ術後の長期の症例もなかったわけで、わたしと同じ世代で、術前の状態が同じでかつ同手術をした人が一生もったなんて事例はないはずでした。
要は、一生もつなんてことはわかりようがないにもかかわらず、それを何ら疑問も抱かずに信じてしまったことを後悔したものです。
何一つ不自由なく健康に生活してきて、まだ若かったが故といってしまえばそれまでですが・・・
「医師の言うことは100%正しい」
それくらいにしか思ってまいせんでした。
当たり前ですが、自分の病気は自分の問題であるということを何より意識し、専門家からのアドバイスは大切にしつつも、最終的にはそれをどう受け入れるか、活かすかは自分で判断していかなければなりません。
「言うは易く行うは難し」
でもこの当たり前のことが難しいですよね。
何と言っても、その病気や症状が難解であればあるほど、医師など「専門家」のアドバイスに全面的に頼らざるをえなくなってしまいがちになるからです。
専門家バイアス
バイアスとは、偏見や先入観などを意味しますが、わたしたちは、日々、良くも悪くもこのバイアスとともに生きています。
とりわけ、自分に馴染みのないことやよく理解できないモノゴトについては、「専門家」の言葉を(無批判に)そのまま受け入れがちです。
それが全て悪いことだと言うつもりはありません。
わたしたちはあらゆることに精通することなどできないわけですから、社会的に認知された「専門家」や「ブランド」の力を借りて、例えば日々の買い物などにおいて(時間を費やさずに)短時間で意思決定したり、ニュースなど種々雑多な情報から(自分にとって重要なもの・そうでないものを)判断したり、整理しているわけです。
バイアスだけでなく、自らの「経験則」が直観的な判断に多分に影響していることも否めないでしょう。
それを踏まえて、自らの健康に関することについては、出来る限りバイアスを排除して視れる、把握できるようになりたいものです。
わたし自身、この体験を通じて自分の健康に対する主体的な視方をもてるようになった今だからこそ、「専門家」の意見に全てを依存することのリスクを認識できます。
最近の例でいうと、新型コロナウィルス感染症です。
同感染症が蔓延して以来、多くのウィルスや感染症の「専門家」たちがメディアに登場しています。
同じ「専門家」でも人によって言っていることに違いがあると感じた方は少なくないと思いますし、今でも本当のところはどうなのか?と疑問に思うことが多々あります。
わたしは、いわゆる大手メディアからの情報だけでは新型コロナウィルスに対する不安・疑問が解消されないため、「専門家」の本を何冊も読み、またネットを通じて国内・海外から多様な情報を入手していました。
その結果自分がわかったことは、100%正しいことは何もわかっていない・・・ということでした。
それでも、だからこそ(いろいろ得た情報の中から)最後は自分で判断するというスタンスを取ることができます。
変形性股関節症は未知のウィルスであった新型コロナウィルスとは違いますが、「専門家」の情報とどう向き合うかという点ではとても学びの多い経験になりました。
最終的に自分で判断をせず、全てを(自分以外の外部の判断に)委ねることによるリスクは常にあります。
今はほしい情報が簡単に入手できる一方で、あまりに多種多様な情報があふれているため、何が正解かわからなくなることもあります。
やはり、最後は自分にとってどうなのか?という判断軸に依ることです。
そう、まさに前回のブログで書いたQOL=Quality of Life(生活の質)です。
現在の年齢、住居、家族、仕事、趣味などなど、自分を取り巻くあらゆる環境を考慮した上で、これからどういう生き方・生活をしたいのか、そこを判断軸にする。
そうすれば、多種多様な情報の中から取捨選択できるし、「専門家」との接し方も自分主体になっていくと思います。
「専門家バイアス」があることを意識した上で、「専門家」やその情報と上手く付き合っていけるようになりたいものです。
2022年11月6日
小さな紅葉
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