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変形性股関節症患者としての体験記(その4)

 

体験記シリーズ、第4回目です!

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

状態が良くなったもう一つの要因は、脚長差の解消です。

 

これも患者仲間を通じて得た情報なのですが、その人の足の状態に合ったオリジナルの靴を作ってくれる理学療法士の先生がいる病院が都内にあることを知りました。

 

さっそくその先生を訪れ、わたしの歩行を分析してもらいました。

 

写真を取り込んだ解析図を見せてもらうと、健側である左脚は(脚長差のせいで)内側に倒れこんでいるようであり、全体的に右側に傾いていました。

 

こんな歪んだ状態のまま放置してきたことに苦言を呈されましたが、何せいつか筋力がつけば差異はほとんど感じなくなるという医師の言葉を信じていたので、補高することに抵抗感を持ち続けていたのですから仕方ありません。

 

現実を受け入れ、これからのことを考えて靴を補高することにしました。

 

細かく精査した上で、完全に自分にフィットする“補高靴”を作製してもらいました。

 

最初はやはり違和感がありましたが、次第に慣れていきましたし、その後の生活において補高靴は完全に必需品となりました。

 

その後、同様に脚長差を補高してくれる靴の専門店を横浜の元町にみつけ、今ではそこで作った靴を愛用してます。

 

靴の研究では先進国のドイツの靴が中心なのですが、モノは非常に良いものの、その分値段も張ります。

 

わたしの場合、補高するので更にコストがかさみますが、やはり靴は大事ですしここにはお金をかけることにしています。

 

夏用のサンダルも補高してもらって作りましたが、モノが良いのでとっても長持ちしています。

 

補高靴を履くようになったことによる効果。

 

それは、何よりも腰痛が緩和されたことです。

 

立っているときの腰への負担は以前よりかなり軽減されました。

 

意固地にならずに(?)もっと早くに補高しておくべきだったと後悔しましたね。

 

 

ところで、私はずっと一つの病院に通い続けてきましたが、セカンドオピニオンを受けるべく別の病院で診察を受けたことがあります。

 

結果は・・・ほぼ同じでした。

 

完全な末期の状態なので、手術をした方がよいとすすめられました。

(レントゲン写真を見るなり「あー、これは酷い」と言われたことを覚えています)

 

また、別の医師体験として、変股症の専門医との電話相談を受けたことがあるのですが、これが何とも衝撃的でした。

 

電話相談に出てきた医師は、こちらから一通り経緯と現在の状態を説明した後に(事前に送っておいたレントゲン写真のコピーを診た上で)、これは末期のどうしようもない状態なので、とにかく動かさないこと、歩くときは常時杖を使い、一度に続けて歩く時間は10分程度とすること、関節を動かすリハビリはかえって逆効果なので不要(というかしてはいけない)。

 

人工股関節への置換は避けられないし、今のままでは手の施しようが無いので、とにかく動かさないでこれ以上ひどくならないようにするしかない、と言われました。

 

また、(現在はこんなことはしないと言いつつ)セメントで関節を固めてしまうといった旧時代の手術の効用についてまで話していました。

 

その当時は、深圧によってゆっくりとながら改善に向かっている段階で、歩くこともできるし、将来に希望が見えてきたところでした。

 

しかしながら、この医師のアドバイス通りの生活をしたら、仕事を辞めて家の中でじっとしていなければならなくなってしまいます。

 

つまり、自立した生活ができなくなってしまいますね。

 

もちろん、今まで自分がやってきたことを変えるつもりなどありませんでしたが、患者の現実の生活を何ら考慮することなく悲観的見解を一方的に言い放たれたこと自体がショックでした。

 

かなり前の話ですし、現在は医療の現場もかなり変わっているとは思いますが、やはり医師によって治療に対する考え方が異なることもあるでしょうから、多様な情報を集めることが大切だと実感させられます。

 

 

皆それぞれに多少無理をしても維持しなければいけない生活があるわけですし、仕事などを通じた人生の目標もあると思います。

 

変股症とうまく付き合いつつ、どうやって自分らしく生きるかを模索しながら生活している方々が多いと思いますが、自分もその一人です。

 

変股症になったことでそれまでの自分の生活が一変し、その後、身体的にも精神的にも浮き沈みを繰り返しながら(もがきながら)の生活を送ってきました。

 

大好きなスポーツができなくなったり、休職したり、通勤苦が原因で転職したり・・・いろいろな変化を余儀なくさせられました。

 

でもその一方で、変股症になったおかげで得られたことも少なくありません。

 

痛みが悪化していった頃、両親が私に対して「(変股症を背負って生きねばならないことに対して)本当に申し訳ない」と泣きながら謝ったことがありました。

 

驚きました。

 

たしかに、わたしはある時まで“健常者”のように自由きままに動き回れる何一つ不自由ない生活をしていたので、変股症発症後の生活をなかなか受け入れられずに苦悩していました。

 

悔しいと思ったことは正直何度もあります。

 

ただ、変股症の原因である臼蓋形成不全は生まれ持ったものですし、両親を恨むなんてことは一時もありませんでした。

 

最近、認知症になってしまった母ですが、息子の股関節のことだけはしっかり覚えていますので、今でも心配してくれます。

 

気にかけてくれる人がいるというのはありがたいことですね。

 

妻や妻の両親、親戚たちもいつも自分の脚のことを気にかけてサポートしてくれるし、自分が本当に恵まれた環境にいることに感謝しなければなりません。

 

自分ひとりで生きているのではない。

 

そして、感謝の気持ち。

 

こんな当たり前ことに心底気づかせてくれたことに、あらためて感謝です。

 

 

(続く)次回、最終回です!

 

 

2017年10月15日

 

 

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