読書雑感『人間の土地』
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さて、今日のブログは個人的な読書雑感です。
かの有名な『星の王子さま』・・・
児童文学の体裁をとっているものの、内容としては子供の心を失ってしまった大人に向けての示唆に富んだ世界的に有名な小説です。
その『星の王子さま』の著者であるサン=テグジュペリ。
フランス人であり、飛行士としての顔ももっていました。
わたしにとっては、サン=テグジュペリといえば、
『星の王子さま』
よりも
『人間の土地』 (新潮文庫)
初めて読んだとき、とても引き込まれました。
先日、本棚を整理しているときに、『星の王子さま』の隣にあったこの『人間の土地』に目がとまり、再び手に取った次第。
何度か読んでいるこの本。
出版されたのは1939年。
航空会社の定期航空パイロットであったサン=テグジュペリ(フランス人)は、欧州-アフリカ、南米など各地を飛び回り数多くの冒険を経験。
この書は同じ飛行士の僚友に捧げたエッセーであり、郵便飛行士としての経験を通じた僚友との友情が、人間の本質についての深い洞察とともに描かれています。
この書の冒頭部、
『ぼくら人間について、大地が、万巻の書より多くを教える。理由は、大地が人間に抵抗するがためだ。人間というのは、障害物に対して戦う場合に、はじめて実力を発揮するものなのだ。』
黎明期の定期郵便飛行士として空から大地と対峙してきたその壮大かつ劇的な体験がうかがえます。
堀口大學の絶妙な訳も味わい深くて惹きつけられます。
同じ飛行家の僚友との関係を通して語る愛、砂漠での遭難と奇跡的な生還という凄まじい体験を通して語られる極限状態に置かれた人間の苦悩と本質。
ただし、この書に真価があるのは、飛行家としてのその劇的な体験そのものではなく、その体験から導き出される『人間本質の探究』にあります。
この本の根本となっているのは『生命の犠牲に意義あらしめようとする、人道的ヒロイズムの探究』(訳者・堀口大學)です。
だからこそ、この書の中には数多くの名言といいますか、心に響く言葉が溢れています。
読むたびに感じ入る名言は異なるのですが、いまの自分にとって響く箇所をあげるとすれば、
『ある一つの職業の偉大さは、もしかすると、まず第一に、それが人と人を親和させる点にあるかもしれない。真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係の贅沢さだ。物質上の財宝だけを追うて働くことは、われとわが牢獄を築くことになる。人はここへ孤独の自分を閉じこめる結果になる、生きるに値する何ものをも購うことのできない灰の銭をいだいて。」
『(ところが)いったん危険に直面するとたちまち、人はおたがいにしっかりと肩を組み合う。人は発見する。おたがいに発見する。おたがいにある一つの協同体の一員だと。他人の心を発見することによって、人は自らを豊富にする。人はなごやかに笑いながら、おたがいに顔を見あう。そのとき、人は似ている、海の広大なのに驚く解放された囚人に。』
仕事こそが自分を自分たらしめているいま、やはり働くことの本質に触れているこのくだりはぐっと心に入り込んできます。
人間関係こそが人が人として生きる醍醐味であり、そして他人の心を「発見」ことによって自分の生も豊かになるという点は、共感極まれりです。
そして、人間の本質に迫る最終章の中にある以下の名言。
『経験はぼくらに教えてくれる。愛するということは、おたがい顔を見あうことではなく、いっしょに同じ方向を見ることだと。」
僚友関係を通した視点で書かれた内容であり、その文脈からする友情が視点となった愛です。
同じ方向・目的を見ることは、組織・チーム運営においては欠かすことのできないこと。
どんなに最新のマネジメント手法を取り入れようが、どんなに優れた戦略をとろうが、そこに集う仲間が同じ方向を向いていなければ、いつか綻びが生じていく。
大企業ならいざ知らず、社員10人程度の小さな会社であればなおさらのこと。
ひとりが違う方向を向いているだけでも、大きな綻びになりかねません。
一緒に同じ方向を見る。
友人でも、夫婦でも、一見すると共通するところはなかったり、やり方・歩み方は違っていたとしても、見ている方向は同じということもありますよね。
わたし自身、妻とは趣味も思考も全く似ていないのですが(苦笑)、やっぱり人生観は相通ずるものがあるし、同じ方向をみているのだと思います。
『人間の土地』を読み返すたびに、その時々で感じられることが微妙に変わりますが、今回はこんなことを感じた次第です。
この『人間の土地』は世界的ベストセラー書ですが、まだお読みでない方にはぜひ一読をおすすめします。
良質な学び、気づきを与えてくれるかけがえのない出会い。
本はやっぱり面白いですね。
2019年11月10日
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