深圧と統合医療
いよいよ春ですね!
暖かくなると、心も身体もワクワクしてきます。
家の近所の桜の名所ではまだ五分咲きでしたが、今週中には満開になるでしょう。
さて、先週日曜日の社内研修会には、スペシャルゲストとして、さいたま赤十字病院の石井先生をお招きし、手術療法を中心に股関節治療の現状についてお話しをいただきました。
その後の質疑応答では当院の先生たちと活発な議論が交わされ、とても有意義な交流の場となりました。
石井先生にはあらためて御礼申し上げます。
さて、今日は医療の観点からみた深圧について、及び将来の医療との関わり方について書いてみました。
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補完代替医療とは?
突然ですが、「補完代替医療」という言葉を聞いたことはありますか?
補完医療とは、西洋医学を補う、補完する医療のことであり、代替医療とは、現代西洋医学に取って代わる、文字通り、代替となる医療です。
西洋医学を中心に据えて定義されていることからもわかる通り、もともとは欧米から発信されている用語であり、欧米での医療の歴史が反映している概念であるといわれています。
補完代替医療は、英語で、
Complementary and Alternative Medicine(コンプリメンタリー・オルタナティブ・メディシン)とい
いますが、
頭文字をとってCAM(カム)と呼ばれています。
欧米社会でもポジティブに認知されるようになってまだそれほど長くない補完代替医療。
例としては、サプリメント等の健康食品、整体、カイロプラクティック、アーユルヴェーダ、スパやヨガなども対象になりますので、非常に広範囲に及びます。
それこそ、以前は「外辺医療」(Fringe Medicine)という排斥的な名でひとくくりにされて、社会のメインストリームから異端視されてきた民間的・伝統的各種治療法だったのです。
(参考文献『補完代替医療入門』上野圭一著・岩波書店)
それが、いまでは「現代医学以外のあらゆる治療法・健康法の総称」として、広く一般にも認知されて、文字通り、西洋医学を中心に発展してきた「現代医療」の補完、または代替機能を果たすようになってきています。
米国の国立補完代替医療センターは、この医療のことを、
「現段階では「通常医療」と見なされていない、さまざまな医学・健康管理システム、施術、生成物質など」と定義しています。
自己判断・自己責任で行う医療であり、日本では、健康保険は効きませんので、すべての費用は自己負担となります。
前述の通り、健康・身体のために提供されるモノ・サービスは、すべて補完代替医療ととらえることができます。
いずれにしても、医療サービスが高度に発達している現代ではありますが、複合的かつ精神疾患との関連性も大きく指摘されている現代の病に対するには、通常医療のみならず、多種多様な“身体に良い”療法を取り入れていくことが必要だと思います。
「人は病の器」
ということわざがあるくらい、人間は病にかかりやすいものです。
加えて、近年の食生活の変化、仕事や生活習慣の変化の影響(ストレス過多社会)が多分にあるのでしょうが、現代の病は心と身体の複合的な原因によるものが多いといわれます。
特に、うつ病などの精神疾患の増加は著しく、また、それが身体疾患につながっているケースも多いため、これまでのように専門別に個別の病に対処していくというよりは、複合的な診療、対処が求められていると思います。
このように、「外」だけでなく「内」なる病が多様に発生し、複合的な対処が必要になっている現代では、発症後の(特に)通常医療による対処療法よりも、予防的な観点からの医療の方がより重要性を増しています。
それは、超高齢社会による医療費の増加を少しでも抑制するためという目的や、人口減少社会に突入しているところで、貴重な労働力を失わないためという目的にもかなうものです。
補完代替医療の特徴である、
予防が究極の目的、自然治癒力の利用、全人的医療(現行医療は部分医療)
といった点をみると、
今後の医療において補完代替医療が果たすべき機能、役割がかなり大きくなってきていることがわかります。
最近では、この補完代替医療と現代西洋医療を組み合わせることによって、両者の特性を最大限に活かし、一人ひとりの患者に最適な医療を提供する“統合医療”という概念も生まれており、実践されています。
深圧は医療?
松本深圧院が提供している深圧施術は、保険の効かない“治療”であり、公的機関などに認定された「通常医療」(制度医療)ではありません。
その点からいうと、当院が提供しているのも補完代替医療といって差し支えないでしょう。
ただし、わたしたちの事業においては、表立って「医療」や「治療」という言葉を使うことができません。
制度的に医療機関として認可されていないからです。
【参考】
医療機関とは、医療法で定められた医療提供施設のことである。狭義においては、医師、歯科医師等が医療行為を行う施設である医院、病院、診療所をさす場合もある。はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師による施術所(治療院、鍼灸院、マッサージ院、整骨院や接骨院)は、医業類似行為を行う施設であり、健康保険が適用されているのでわかりづらいが、法律分野で用いる場合の名称からの医療機関からは外れる。
とはいえ、わたしたち自身はそのような定義にとらわれるものではありませんし、やっていること自体は、一般的認識でいうところの「医療」であると思っています(少なくともそういういう心づもりで臨んでいます)。
痛みの除去、予防、対処、改善に関するアドバイス等々、やっていることの“本質”は「医療」と何ら変わりはありませんので。
保険が効くかどうかの違いだけ。
保険が効けば、患者さんたちにとっては費用負担の面から大きなメリットがあると思いますが、一方で現在の医療制度の下では、わたしたちが提供しているような長時間の施術サービスを提供することができません。
よって、諸々の環境を考慮すると、事業としては現時点では今の形態がベストと考えています。
医療との協業
ただし、ここで留まることなく、新しい形態にもチャレンジしていきたいと考えています。
それが、医師、医療機関との“協業”です。
松本総院長も、以前からここを視点に据えています。
そう遠くない未来に、整形外科医と連携した“協業サービス”を提供できるようになる日がきっと来るでしょう。
痛みの除去、一人ひとりのQOLの向上を実現するために、深圧だけで全てを解決しようとするのではなく、医療横断的な取組みによって、最適な策を講じていけるようになりたいと考えています。
今や、医療の世界に限らず、 既存の枠組み、とりわけ個別・専門分野を中心とした“部分”からの取り組みでは解決できないことばかりです。
それは、ビジネスなどあらゆる分野において、専門志向より学際的・学際志向になってきていることに顕著にあらわれており、従来の教養系リベラルアーツだけでなく、広く深く学ぶ学際系のリベラルアーツ志向の世の中になっていることを実感します。
※学際:研究対象がいくつかの領域にまたがっていること
松本深圧院は、深圧という施術を提供する「専門院」ではありますが、事業のスタンスとしては、専門志向・思考に陥ることなく、学際志向でありたいと考えています。
そして、いつの日か、制度医療の枠組みを超えた協業、統合医療を通じて、深圧が広く一般に認識されるように日々精進していきます。
(私の治療哲学を一言でいえば)害にならない限り、効くとおもわれる妥当な方法はなんでも利用すること
『人はなぜ治るのか』アンドルー・ワイル(アメリカの健康医学研究者・医学博士)著より
2018年3月25日
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